木材や竹など、森林資源を原料とした植物由来の新素材「セルロースナノファイバー」。植物由来でカーボンニュートラルなエコ素材であり、日本の豊かな森林資源の新たな活用用途としても注目されています。このセルロースナノファイバーの最新研究や取組の成果を報告する「第280回生存圏シンポジウム 進む!セルロースナノファイバープロジェクト」(主催:ナノセルロースフォーラム、京都大学生存圏研究所)が、2015年3月20日(金)に京都市のテルサホールで開催されました。注目のシンポジウムとあって、募集開始後全国から申し込みが殺到し、定員の600名がすぐに満席になってしまうほどの盛況ぶり。研究発表の後には質問が飛び交い、研究成果や試作品の展示コーナーでも活発な議論が交わされるなど、熱気あふれるシンポジウムとなりました!

<シンポジウムは満員御礼の大盛況!展示コーナーでは最新の成果発表や試作品の展示が行われました>

開会挨拶では、日本のセルロースナノファイバー研究をリードし、シンポジウムの主催者でもある京都大学生存圏研究所の矢野浩之教授が登壇。「日本は世界でもっともナノセルロース分野の研究開発が進んでいる国。今年度はナノセルロース元年です」との宣言からシンポジウムはスタートしました。
セルロースナノファイバーの特徴は、植物由来で持続可能な資源で環境負荷が少ないだけでなく、軽くて強く(鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強さ)、熱にも強いこと。これらの特徴を生かし、第1部では「高機能リグノセルロースナノファイバーの一貫プロセスと部材化技術開発発表」と題し、様々な製品の部材(構造部品)として応用する技術開発についての成果発表が行われました。
最初に発表者として登壇した矢野教授は、「ナノセルロースファイバーを10年研究してきて、ようやくはるか先に成果の島影が見えるようになりました。島までの海は、波風が立っていないので、順調に行けばたどり着けるはず。強い追い風を利用して、世に商品を出していきたい。1年後は、たどり着いた島の状況、どうやってたどり着いたかを発表できると思います」と予告。力強い言葉に、会場中から大きな拍手を受けていました!

<セルロースナノファイバー研究をリードする京都大学矢野教授の研究発表。力強い言葉に会場は拍手喝采!>

続いて、企業や研究機関から、セルロースナノファイバーの強度を高め、さらに製造コストを下げるために行った実験成果についての発表がありました。強度を保ちながら、耐熱性や弾性率の向上、膨張率の低下を実現するための具体的な実験方法や数値結果が発表され、まだ始まったばかりの研究開発分野ですが、部材としてセルロースナノファイバーが活用される日は遠くないことが感じられる成果が示されていました。

第2部は、農林水産省との協同プロジェクトである「工学との連携による農林水産物由来の物質を用いた高機能性素材等の開発」の概要紹介と成果発表が行われました。セルロースナノファイバーを食品や化粧品に応用する研究や、樹脂複合化することでプラスチック製品や包材に展開する実験の成果が発表されました。セルロースナノファイバーの保水性を活かして化粧品の成分としたり、スマホケースなどの試作品を制作したり、実用段階が近づいていることが感じられる発表でした!

第3部では「ナノセルロース実用化に向けた国の支援策について」と題し、各省庁の施策が発表されました。セルロースナノファイバーの製造(技術の研究開発など)を支援する経済産業省製造産業局紙業服飾品課の担当官、農林業や食品産業などから国産セルロース原料の供給を支援する農林水産省林野庁整備部研究指導課の担当官に続き、環境省地球環境局地球温暖化対策課の担当官が、地球温暖化対策に貢献する分野への支援策を発表しました。自動車部材などの構造部品は、現在は石油由来の素材が多く使われていますが、ナノセルロースファイバーに転換することにより、持続可能な素材となるだけでなく、部材が軽量化することにより燃費改善が期待できます。セルロースナノファイバーは、低炭素社会を実現するポテンシャルを持った素材として、環境省では製造から廃棄までのCO2排出削減効果や課題解決策の検討や、用途開発の戦略検討に対し支援していく方針を打ち出しています。

<地球温暖化の現状についての説明の後、環境省のナノセルロースファイバーに関する支援策が発表されました>

最後に「実施プラント状況」として、すでに実証ステージに入っている企業からの発表が行われました。セルロースナノファイバーの保水性を活かした具体的な商品のサンプルワークの成果が示され、発表企業の展示コーナーではより具体的な質問や交渉が行われていました。

登壇者は17人、5時間以上の開催時間となりましたが、最後まで熱気にあふれ、セルロースナノファイバーへの期待の大きさが伺えるシンポジウムとなりました。現在は研究段階ですが、矢野教授の力強い予告どおり、間もなく私たちの生活に欠かせない素材になるかもしれません。持続可能な原料から作られる新素材の力で、低炭素社会に貢献できる日が楽しみです!

ナノセルロースファイバーについて詳しくはこちら(京都大学生存圏研究所生物機能材料分野)

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