「エコチューニング」という言葉が、注目されています。「エコチューニング」とは、CO2排出量削減のために、商業施設やオフィスが入居するビル(業務用建築物)の設備の使い方(運用)を工夫して改善すること。ビル内のお店でお客さまに楽しく過ごしてもらえる快適性や、オフィスで効率良く仕事ができる生産性を確保しつつ、大きな初期投資をせずにCO2削減を目指す『業務用建築物等の「エコチューニング」による低炭素化・省エネビジネス創出シンポジウム』が、平成27年3月12日(木)に環境省の主催で開催されました。

最初に、主催の環境省 地球環境局 総務課 低炭素社会推進室の担当官から「エコチューニングビジネスモデル確立事業」についての説明が行われました。エコチューニングのビジネスモデルとは、既存設備の運用改善等によって削減された光熱水費を、ビルオーナーと、ビル管理会社で利益として分け合うこと。つまり、ビルオーナーは光熱水費が節約でき、ビル管理会社はエコチューニングを提案し運用することによる成果報酬を得ることができます。

第1部:エコチューニング実践事業の成果報告とビジネスモデルの創出

第1部では、これまでの事業の実践結果や効果検証等の成果、ビジネスモデルの仕組みや制度の検討状況について報告されました。一般社団法人日本ビルエネルギー総合管理技術協会の橋本有史 副理事長は、平成26年7月から7ヶ月間に渡って実施されたエコチューニングの実践結果と効果検証について報告。実践したのは194棟で、366項目の具体的な実践項目を提示し、各棟がどのようなエコチューニングを実践するのか項目を選択しました。7ヶ月の実践後、過去3カ年の平均CO2総排出量の7.5%が削減され、光熱水費削減額は約4億円と試算される成果がありました(※)。
多く採用された項目は空調システムの室内温度設定の見直しや運転時間の短縮、照明設備の廊下・ホールの消灯など、一般的な知識があれば可能なものもあれば、ビル管理の技術や知識が必要なものもありました。各実践項目の技術レベル、難易度と、削減効果についての整理も発表され、今後の参考になったとの声が聞かれました。

※入居率や利用率の増減など大幅な変動要因(排出量の増加や15%以上の大幅減少)があった建築物を除く

続いてパナソニック株式会社エコソリューションズ社の栗尾孝 部長より、エコチューニングを遠隔支援で行うビジネスモデルの構築について報告が行われました。エコチューニングを実践する施設のエネルギー使用データ、空調設備などの運転データをデータベースに送信し、そのデータを遠隔地から分析を行うことで現地の施設管理者と協力して運用する仕組みです。病院、大規模ビル、中規模ビル、店舗と、異なる4種類の建築物で実施し、いずれも10%以上の省エネ効果を期待できることが分かりました。施設管理者と分析実施者の会社が同じ場合と異なる場合、データ転送方法なども検証し、「エコチューニング遠隔支援」の基本ビジネスモデルの形が示されました。

Fun to Share賛同団体でもある公益社団法人全国ビルメンテナンス協会の金子誠 理事からは、エコチューニングのニーズ調査、ビジネスモデルの確立に向けた検討結果等が報告されました。ニーズ調査では実践したビルオーナーの約6割が満足しているとの回答があった一方、今後の制度拡大のためには中立的な立場から契約金額や報酬金額の調整や事業の支援をしていく必要があること、またエコチューニング技術者資格制度、事業者認定制度の創設が必要であると述べました。

第2部:先進事例の紹介とエコチューニングビジネスの可能性

第2部は、先進事例の紹介と登壇者によるパネルディスカッションが行われました。事例として紹介されたのは、福岡市と東京都の自治体による取組です。福岡市は、病院や給食センターなどの市有施設において、地方自治体としては初めて平成17年度からソフトESCO事業を実施しています。福岡市財政局アセットマネジメント推進部設備課の馬場章弘 課長から、ソフトESCO事業の誕生の経緯や、これまでの事業で浮き彫りになった課題、さらに事業を展開していくうえでのポイントなど、具体的な事例に沿って紹介されました。市有施設で成果をあげたことを踏まえ、平成23年度からは民間施設に対象を広げてソフトESCO事業を実施しています。

続いて、東京都地球温暖化防止活動推進センター 省エネ推進チームの永田晋也 主任より、東京都委託事業の『「初期投資ゼロ」省エネ支援モデル事業』について紹介されました。福岡市のソフトESCO事業を参考にスキームが構築され、支援対象事業者(ビルオーナー)は、東京都に登録された事業者から省エネルギーに対する提案を受け、採用した提案に基づいた運用改善の実施のサポートが受けられます。つまり、「初期投資ゼロ」で省エネ・経費削減が達成できる仕組みです。事業スタートからわずか2年ですが、徐々に経費削減の実績が出始め、今後のさらなる展開を目指しています。

パネルディスカッションでは、始めにビルオーナーの立場である一般社団法人日本ビルヂング協会連合会の小川富由 常務理事より「エコチューニングへの期待と課題」と題し、CO2排出量削減を目指した「ビルエネルギー運用管理ガイドライン」の概要と、オフィス分野における低炭素社会実行計画等について説明がありました。「ビルエネルギー運用管理ガイドライン」では運用改善で39項目、改修・更新およびシステム変更・導入などで61項目、合計100の対策メニューを提示し、取組が進んでいますが、投資コストが必要な改修項目の普及が必要なこと、また中小ビルでの取り組みが遅れていることが課題としてあげられました。

続いてのパネルディスカッションでは、エコチューニングビジネスモデル確立検討会 の三橋博巳 委員長をコーディネーターに迎え、活発な議論が行われました。福岡市のソフトESCO事業を手掛けてきた福岡市の馬場課長、エコチューニングの遠隔支援ビジネスを実践したパナソニックの栗尾部長は、「実感として、エコチューニングはビジネスとして成立する」と声を揃えました。しかし一方で、「1年、2年では結果が出ない」ため、長期的な視点を持つ必要性が指摘されました。
また、ビルメンテナンス会社(事業者)の立場である日本ビルエネルギー総合管理技術協会の橋本副理事長は、発注する立場のビルオーナーだけでなく、実施側も「本当にビジネスになるのか?」と手さぐりしている段階だと説明。事業者としては、ビジネスの信頼性を高めるために「プロセスマネジメントの標準化」や「技術者の育成」を進め、品質が保証されたサービスになることが急務だと課題をあげました。

環境省の担当官からは、これまでのエコチューニング実践事業で366もの細かなエコチューニング対策項目が開発されているので、今後はさらに多くのビルでの実施を期待していること、またビルオーナー・事業者が十分なディスカッションをして信頼関係を結ぶことで、双方が目標を目指していく「環境コミュニケーション」が大切だとの見解を示しました。さらに質疑応答では、技術面ではできることが多いので、ビルオーナー・地方自治体・ビルメンテナンス事業者だけでなく、ビルのテナントの協力を得るための環境経営スキームを提示してほしいなど、具体的な提案も出され、活発な意見が交わされました。

<パネルディスカッションでは、活発な意見交換が行われました!>

環境省では、今後も低炭素社会の実現に向けた「エコチューニング」のビジネスモデルの確立を目指し、技術者資格制度・事業者認定制度の検討など、さまざまな施策を実施していきます。今後もFun to ShareのHPなどでご報告していきますので、「エコチューニング」の展開にぜひご注目ください!

シンポジウムの配布資料は、こちらからダウンロードできます。

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